浪速区医師会 七十年の歩み

てしだいに目が左側によってきます。それに従うように体も斜めになりながら泳ぎだし、完 全に目が左に寄ると、地べたを這って泳ぐ特有の格好になり、成魚となります(図1)。と ころで、この「目の移動」を操っているのは何でしょうか?色々な研究の結果、甲状腺ホル モンが作用すると目が移動することが明かにされています。またこれは大変有名な話ですが、 参考までに紹介しましょう。ある有名な学者が「おたまじゃくし」から「かえる」になるの に何が働くのか調べる目的で、牛の色々な部分の内蔵をすりつぶして餌として与えてみまし た。すると、甲状腺を餌として与えた時、「おたまじゃくし」から「カエル」になるスピー ドが大変早まることをみつけたのです。これは言うまでもなく、甲状腺に含まれる、甲状腺 ホルモンの作用によるものです。甲状腺ホルモンやステロイドホルモンの仲間はこうした大 人に成長するためのステップ、ステップに作用する、つまり「変態」を促進する働きがあり ます。 女性ホルモンもステロイドホルモンの仲間ですから当然そうした「変態」を促進する作用 をもっています。一例を示してみますと、遠くから見ると男の子か女の子かわからないから だつきの「少女」に女性ホルモンが作用すると、単に体が大きくなるだけでなく、胸を豊か にし、丸みをおびた、「女性特有の体型」につくりあげてしまいます。この「からだつき」 は体のバランスも含め、少女の体型とは全く異なるものです。ですから、少女をコピーの様 に拡大して大人の女性と比べてみればわかりますが、両者の体型には大きな隔たりがありま す。「おたまじゃくし」と「カエル」程は違わないにしても、ほとんど「変態」に近い変わ り様だとおもいます。女性ホルモンは大人になる過程でこうした変化を女性にもたらします。 数あるホルモンの中で私は特に女性ホルモンに興味をもちました。 男女の外見が区別のつかない体の中から、ある時期ホルモンの分泌が始まり、突然に、胸 が膨らみはじめ、月経が起こる頃から、腰のくびれができて、丸みを帯びた女性の体に変化 します。妊娠すればさらに乳房は大きくなり、分娩後は乳房からは乳汁が出て、哺乳器の役 割に変化います。まるでオタマジャクシがカエルになるように、女性ホルモンは「女の子」 を「女性」に、そして「母親」に変態させます。 これはすこし余談になりますが、女性の一生のなかでの女性ホルモンの役割について、も うすこし踏み込んだお話をします。そもそも、女性ホルモンの主たる目的は何かといいます と、それは「種の保存」に関わる舞台を作りだすことです。思春期になると排卵にともない 月経が開始します。すると、左右の卵巣から女性ホルモンの分泌が始まります。この女性ホ ルモンは血液から全身に運ばれ、様々な体の部分で作用しながら、少女のからだを女性の体 に変えてしまいます。例えば、胸に作用して、豊かな乳房をつくり、皮膚に作用してしっと りとしたすべすべした肌をつくります。また「ふさふさした髪の毛」や「丸みをおびた女性 特有の体型」も女性ホルモンの影響によるものです。こうして、女性ホルモンの影響で成熟 84

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