で産生されるサイトカインですが、その受容体はホルモンと同じグループに属する(7回膜 貫通型 G 蛋白結合型受容体)もので、サイトカインのグループとはかけ離れたものでした。 そこで、この物質が脳下垂体においても重要な役割をしているのではないか?それが私の チャレンジのきっかけでした。脳下垂体には下垂体濾胞星状細胞(FS 細胞)と呼ばれる免 疫担当細胞が存在します。その役割としてホルモン産生細胞を取り囲んで支持する支持細胞 の役割をしているだけでなく、ホルモン産生細胞の分泌を調節する重要な役割を担っている と考えられていますが、その詳細は不明でした。 そこでCINCの測定系を確立し、FS細胞のcell lineを用いて、FS細胞がCINCを産生し ていることを突き止めました。そこで、最後の詰めの実験として、実際の「脳下垂体組織を 用いて、脳下垂体の前葉細胞に存在する FS 細胞に CINC が存在するかどうか?」確かめる 研究を部下に指示しました。 しばらくして彼が成果を持参していました。「先生、確かに下垂体前葉の FS 細胞に CINC の存在を確認しました」と前置きして、話を続けました。「しかし先生、下垂体の後葉には、 前葉を遥かに超える CINC が存在することがわかりました」と、興奮して話しだしたのです (図2)。 私としては、後葉での CINC の存在は大発見だけど、なぜ「後葉の組織も染色したのか?」 でした。彼に命じたの「前葉の FS 細胞を染色するように指示」したはずなのに・・・。 彼の答えはこうでした。最初は脳下垂体を取り出し、前葉を染めるのに、後葉を分離して から、前葉を染めていたそうです。しかし、後葉の分離はとても手間が掛かり、面倒くさくて、 その手間を省くために、前葉と後葉を分離せず、まるごと染めたら、偶然、CINC が後葉に 染まっているのを発見し、びっくりして私のところに駆けつけた次第だとのことでした。 「ズボラは文化を創る」「ズボラ、つまりサボって楽をしようとする気持ちは、新しい技術 を生み出す」との格言を聞いたことがありましたが、まさに彼の発見は格言どおりでした。 ズボラは「セレンディピティ」を呼び寄せる、と言えるかもしれません。 彼が下垂体前葉の FS 細胞に CINC の存在を確認し、「FS 細胞にサイトカインが存在する」 と、世界に先駆けて雑誌に報告するため論文を用意していた頃、びっくりする報告が舞い込 んできました。下垂体濾胞星状細胞(FS 細胞)から別のサイトカインのインターロイキン 6が産生されていると言う報告でした。その報告は内分泌の雑誌としては最高峰の Endocrinoligy に掲載されました。その研究室は、なんと私が留学していたマックロード教 授の研究室からの報告でした。私共はさらにその上を行くように、下垂体の後葉の CINC の 産生元を追求しました。 一連の研究成果から、CINCが視床下部のオキシトシンニューロ ンで産生されていて、ストレスに反応して、後葉から放出される「第三の後葉ホルモン」で、 そのニューロンを「chemokinergic neuronal pathway」と名付け Endocrinoligy に報告しま 88
RkJQdWJsaXNoZXIy NDY3NTA=