した(図3)。ケモカインが神経伝達物質として働いているという報告は世界で初めての報 告でした。 それからは「神経系・内分泌系・免疫系の相互関連」を研究する方向に足を踏み入れました。 さらに「神経内分泌系」はストレスと密接に関わりますので、ストレス関連の研究にも力を 入れました。婦人科疾患でストレスと関わる疾患には月経異常、月経前症候群(PMS)、摂 食障害や更年期障害などがあり、こうした疾患を対象に臨床研究としてこれらのストレス関 連の婦人科疾患にも興味の対象を広げました。そこで、ストレスによる「神経・内分泌・免 疫系の相互関連」をテーマに研究分野を拡大しました(図4)。基礎研究の分野でも、研究 を開始しこの分野での論文を多数報告しました。独自に切り開いたと思っていたこの分野に、 恩師のマックロード教授の研究室も同様の研究テーマで論文を次々発表され驚きました。国 際学会でマックロード教授に久しぶりにお会いしたとき、お互いの研究の関心が同じ方向に 向いていることに、びっくりしました。「君なら、こっちの方向にくると思っていた。この 分野の研究は今始まったばかりだ。私にはもう時間がない。その分、頑張って欲しい」そう 別れ際に、言い残して、励まされました。 米国留学での脳下垂体でのプロラクチン研究がきっかけで、帰国後も同様の研究生活を続 けながら、「プロラクチンがサイトカイン」と言う論文に遭遇し、これが「セレンディピティ」 を引き寄せ、脳下垂体でのサイトカインの役割を研究しているなかで、部下の「ずぼらな研 究態度」も相まって、「ストレス研究に入り込む」とともに「chemokinergic neuronal pathway」の発見に繋がりました 帰国後、しばらくの大阪大学での研究生活が続きました。その後、金沢大学の教授に就任 された井上先生が、北陸エリアでの生殖内分泌の発展に力を貸して欲しいとの要望で、金沢 大学に移動し、引き続き金沢で研究生活を続けました。 大阪大学時代から、臨床研究のテーマは、ストレスと関わる疾患の「不妊症」「月経異常」「月 経前症候群(PMS)」「摂食障害」や「更年期障害」などでしたが、金沢大学に移ってからは、「更 年期女性のホルモン療法」が女性の更年期以降のヘルスケアに重要であるとの認識も高まっ てきておりましたので、ホルモン療法の講演活動も精力的に行っておりました。 そんな中、偶然、金沢大学の薬学部で、アルツハイマーの研究をテーマにしている山田教 授と出会い、たちまち、意気投合して、「ストレスと閉経とうつ、認知症」の研究が始まり ました。これが、「ストレスと欝」に関わる研究分野への 「セレンディピティ」でした。去勢したネズミにストレスを加えると海馬の神経細胞が減少し、 記憶力の低下、うつ状態などが起こってくること、その状態のネズミに女性ホルモン(エス トロゲン)を補充すると海馬の神経細胞の減少を防ぐことができることを明らかにし、 Neuroscience に報告しました(図5)。 89
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