浪速区医師会 七十年の歩み

さらに、拍車を掛けるように、もう一つ、金沢での「セレンディピティ」に導かれる出会 いがありました。金沢はもともと「補完代替医療」の研究が盛んで、私が金沢大学に赴任し てまもなく、全国に先駆けて「日本補完代替医療学会」が設立されました。そこで、この流 れに沿うように金沢大学医学部の中にも「補完代替医療学講座」が開設されました。もちろ ん全国の医学部の中で「補完代替医療学講座」を持っている大学はありませんでしたので、 全国初の開設講座でした。私もその講座で、学生たちに「漢方やサプリメント」の講義をお こなっておりました。同時に、ストレスと関わる疾患に対する漢方やサプリメントの研究に も精力的に取り組みました。大阪大学時代にも、不妊症と漢方につきましては研究歴があり ましたので、すんなり研究に入り込めました。 以前、まだ、補完代替医療講座が金沢大学に設立される前の話ですが、サプリメントで出 入りしている関連メーカーから「プラセンタがうつに効く」と聞いたことがありましたが、 そのときは「そんなもの効くはずがない」とひと蹴りしました。しかし、確かにサプリメン トのなかには、我々が想像もしていない未知の効能が隠れていることもよく理解していまし た。そして、ストレス研究として、すでに私達が確立した「うつの動物実験系」を有してお りました。そこで、なんの挑戦もせず、ただ頭の中で軽々しく判断を下すのではなく、この 実験系を使って、それが真実かどうか検証できるのではないか、そう考えるに至りました。 根拠のない話だからといって「そんなもの効くはずがない」とひと蹴りするのは、科学者と して「傲慢な態度」である、そう反省して、謙虚に真実と向き合うつもりで、実験に挑戦し てみました。「なにかきっと発見できる」と思いながら、コツコツと化石を掘っていた高校 時代の私に立ち戻りながら。これがサプリメントに関わる「セレンディピティ」の出会いです。 研究は金沢大学薬学部の山田先生との共同研究として、薬学部の大学院生と共に始めました。 鬱の患者は海馬の神経細胞が減少している。だから、ストレスをかけて「欝のねずみ」を作 成し、そのネズミにプラセンタを飲ませたら、減少していた海馬の神経細胞が回復するはず。 実験の結果は驚くものでした。ストレスで減少した海馬の神経細胞がプラセンタの摂取で回 復していました(図6)。うつに効果があるなら、更年期障害の鬱にも効果があるはずだ。 そう信じて、プラセンタサプリの臨床試験をすると、案の定、欝だけに限らず、更年期障害 の諸症状を改善することが判明し、国際雑誌に報告しました。さらに、更年期障害の臨床試 験に参加した患者さんが、「プラセンタを飲んでいると風邪を引きにくい」と口にしていま した。そこでプラセンタが免疫系に影響 するかどうか、基礎的、臨床的研究を行い、やはりプラセンタが免疫系を高める結論を得て、 国際雑誌に報告し、今でも多くの雑誌編集者からの総説の執筆依頼が届いています。 さて、話は米国留学中の時代に戻りますが、この時期にも、私のその後の人生を大きく変 えたマックロード教授からの言葉による「セレンディピティ」がありました。 90

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